「私はこういう人間だから」
この言葉を、最近口にしていませんか。
「私は人前で話すのが苦手だから」
「もうこの歳だから」
「昔からこうだから」
自分の性格や能力を「変わらないもの」として受け入れている。それが当たり前だと思っている。
でもこれは、脳のバグかもしれません。
スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックが、20年の研究から導き出した答えがあります。
2つのマインドセット

ドゥエック博士は、人の思考パターンを2つに分類しました。
一つ目は「固定型マインドセット」。自分の能力や性格は生まれつき決まっていて、変えることはできないと考えるパターン。
二つ目は「成長型マインドセット」。今の自分の能力はあくまで現時点のもので、努力や学びを通じていくらでも成長できると考えるパターン。
この違いが、人生のあらゆる場面で結果を変えてしまうんです。
失敗の「意味」が変わる

固定型の人にとって、失敗は「自分の限界の証明」です。
テストで悪い点を取ったら「やっぱり自分は頭が悪い」。仕事でミスをしたら「自分には向いていない」。人間関係がうまくいかなかったら「自分はコミュニケーション能力がない」。
だから失敗を避ける。挑戦を避ける。現状にとどまろうとする。
成長型の人にとって、失敗は「成長の途中」です。
同じテスト、同じミス、同じ失敗でも、「ここを改善すれば次はうまくいく」と捉えられる。だから挑戦を選べる。
同じ出来事が起きているのに、思考パターン一つで、その後の行動が正反対になる。
マイクロソフトを変えた一冊の本

この理論の力を最も劇的に証明したのは、マイクロソフト社です。
2014年、CEOに就任したサティア・ナデラは、当時停滞していたマイクロソフトに「成長型マインドセット」を導入しました。
きっかけは、ドゥエック博士の著書『マインドセット「やればできる!」の研究』。
ナデラは社員に「失敗をより大きな学習の一部と考える」思考を求めた。失敗を恐れずにクラウド事業に挑戦した結果、四半期でクラウド事業の売上は114億ドルを記録。マイクロソフトは世界のトップ企業に返り咲きました。
技術でも戦略でもない。思考パターンを変えただけ。
「私はこういう人間だから」が出たとき

ドゥエック博士は重要なことを指摘しています。
誰の中にも固定型と成長型の両方が存在している。
完全に固定型の人も、完全に成長型の人もいない。状況によって、どちらかが発動する。
だから大切なのは、自分が固定型に入ったことに「気づく」こと。
「私はこういう人間だから」
この一言が出たとき、あなたは固定型に入っている。
それは事実ではない。脳が「今はもう変われない」と錯覚しているだけなんです。
「まだ」を足すだけでいい
ドゥエック博士が勧めるシンプルな方法があります。
「できない」を「まだできない」に変える。
「私は英語ができない」→「私はまだ英語ができない」
「私は人前で話せない」→「私はまだ人前で話せない」
たった二文字。「まだ」を足すだけ。
でもこの二文字で、文の意味が完全に変わる。「できない」は終わり。「まだできない」は途中。
途中なら、まだ先がある。
今の自分は、最終形ではない

50代になると、「もう変われない」と感じやすくなります。
体力は落ちている。記憶力も若い頃とは違う。新しいことを始めるのが怖い。
でも、幸福度のU字カーブが教えてくれた通り、47歳の底を過ぎたあと、人は若い頃よりも高い幸福度に達する可能性がある。
変われないのではない。変わり方が変わっただけ。
「私はこういう人間だから」が出たとき、一度立ち止まってみてください。
それは本当に事実ですか。それとも、脳のバグですか。
「まだ変われる」と思えた瞬間、脳は新しい回路を作り始める。




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