人間の脳は、毎秒1,100万の情報を受け取っている。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚。五感から絶え間なく入ってくる膨大なデータ。
けれど、その中で意識にのぼるのは、わずか50。
1,100万分の50。
では、残りの情報はどこへ行くのか。
捨てられています。
脳は、すべてを処理することができません。だから「RAS(網様体賦活系)」というフィルター機能を使って、「重要なもの」だけを通し、それ以外を自動で削除しているんです。
そして、ここが一番大切な話です。
何を「重要」と判断するかは、あなたが何を信じているかで決まる。
脳は、スマホのおすすめ機能と同じ

スマホで怖い動画ばかり見ていると、おすすめが全部怖い動画で埋まる。
猫の動画ばかり見ていれば、猫だらけになる。
アルゴリズムが「この人はこれが好きだ」と判断して、同じ種類の情報を自動で集めてくるからです。
脳も、まったく同じことをやっています。
「どうせ私なんて」と思っていれば、脳はダメな証拠を検索する。
職場で上司がたまたま目を合わせなかっただけで、「やっぱり嫌われている」と解釈する。
「私はうまくいく」と思っていれば、脳はチャンスを検索し始める。
同じ職場で、同じ上司の些細な笑顔を拾って、「今日はいい感じだ」と感じる。
世界は何も変わっていません。
あなたの脳の「検索テーマ」が変わっただけなんです。
確証バイアスという罠

心理学では、これを「確証バイアス」と呼びます。
自分がすでに信じていることを裏づける情報ばかりを集め、反対の情報を無視する脳の癖です。
これは意志の力ではコントロールできません。自動的に、無意識のうちに起きている。
だから厄介なんです。
「自分は愛されない人間だ」と信じていれば、愛されている証拠が目の前にあっても、脳はそれを「重要ではない」と判断して捨ててしまう。
代わりに、冷たくされた記憶、無視された瞬間、失敗した経験だけを丁寧に拾い上げて、あなたに届ける。
「ほら、やっぱり」と。
あなたが見ている現実は、世界のすべてではありません。
脳が選んだ、ほんの一部の映像なんです。
鏡は、あなたより先に笑わない

ここで、一つの比喩を思い浮かべてください。
あなたの目の前に、大きな鏡があります。
鏡に映った自分の顔が、不機嫌だったとします。
そのとき、鏡の中に手を伸ばして、映った顔の口角を持ち上げようとしても、無意味ですよね。
鏡は、あなたより先に笑わない。
先に笑うのは、いつもあなたのほうです。
現実も、これと同じ構造をしています。
嫌な人を変えようとする。
環境を変えようとする。
状況をどうにかしようとする。
全部、鏡の中に手を伸ばしているのと同じことなんです。
現実は、あなたの内側の映し鏡。
脳のフィルターがあなたの信じていることに合わせて情報を選んでいる以上、あなたの内側が変わらなければ、見える世界は変わりません。
検索テーマを変える

では、どうすればいいのか。
脳の検索テーマを、意識的に変えるんです。
難しいことではありません。
たとえば、夜寝る前に、今日あった「よかったこと」を3つだけ思い浮かべる。
大きなことでなくていい。「ごはんが美味しかった」「天気がよかった」「電車で座れた」。それだけで十分です。
これを続けると、脳は「この人はいい情報を求めている」と判断して、日中も自動的にポジティブな情報を拾い始めます。
スマホのおすすめ欄を入れ替えるのと同じです。意識的に違うジャンルの動画を見続ければ、おすすめは変わる。脳も同じ。
もう一つ。朝起きたときに、「今日はいい日になる」と口に出す。
根拠はなくていい。脳は「真実かどうか」ではなく「繰り返し入ってくる情報」を重要だと判断します。だから、言葉にして繰り返すだけで、フィルターの設定が変わるんです。
先に変わるのは、いつもあなた

現実を変えたいなら、外の世界と戦うのをやめてください。
先に変わるのは、いつもあなたのほうです。
あなたが変われば、脳のフィルターが変わる。
フィルターが変われば、目に入る情報が変わる。
情報が変われば、感情が変わる。
感情が変われば、行動が変わる。
行動が変われば、現実が変わる。
鏡は、あなたより先に笑わない。
けれど、あなたが笑えば、必ずついてくる。
その小さな積み重ねが、あなたの人生を変えていく。




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