「ありがたいな」が増えると、毎日が変わる理由

カリフォルニア大学デービス校のロバート・エモンズ教授は、10年以上にわたって「感謝」の効果を研究してきました。結果は明確です。感謝の習慣を持つ人は、そうでない人より幸福感が高く、睡眠の質も改善し、人間関係も良好だった。

「感謝しましょう」と聞くと、少し身構えませんか。

「そんなきれいごとで何が変わるの」「感謝できるような状況じゃない」「恵まれている人が言うことでしょ」。そう感じるのは、自然なことです。つらいときに「感謝しなさい」と言われても、心に入ってこない。むしろ反発したくなる。わたしもそうでした。

けれど、感謝というのは「無理やりありがたがる」ことではないんです。すでにあるものに、ただ目を向けること。それだけのことなんです。

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脳は「足りない」を探すようにできている

人間の脳は、もともと「足りないもの」「危険なもの」を見つけるように設計されています。生き延びるために、そう進化してきた。

社会心理学者のロイ・バウマイスターは、「悪いは良いより強い」という有名な論文で、人間の脳はポジティブな出来事よりネガティブな出来事に強く反応することを明らかにしました。1つの悪い体験を打ち消すには、3〜5倍の良い体験が必要だとも言われています。

だから意識しないと、「ない」「足りない」「まだダメ」ばかりが目につくんです。

わたしもそうでした。仕事は順調なのに、人間関係のことばかり気になる。体は元気なのに、お金の心配が頭から離れない。家族は健康なのに、「もっとこうだったら」と思う。旅行から帰ってきた翌日にはもう、「次はどこに行こう」と考えている。楽しかったはずの旅行が、もう「過去」になっている。

いいことは10あっても、たった1つの嫌なことに全部持っていかれる。あの感覚です。

これは、欲張りなのではありません。脳の初期設定がそうなっているだけ。だからこそ、「ある」に意識を向けることは、脳の初期設定を書き換える行為になるんです。

感謝は精神論ではなく、脳の使い方の話。これを知っているだけで、「ありがたいな」の意味が変わります。

夜に「3つ」思い浮かべるだけ

エモンズ教授の研究では、寝る前に「ありがたかったこと」を3つ思い浮かべるだけで、幸福感が上がり、睡眠の質も改善したという結果が出ています。

ノートもペンもいりません。布団に入って、目を閉じて、頭に浮かべるだけ。

「朝のコーヒーがおいしかった」「電車で座れた」「帰り道の風が気持ちよかった」「夕飯のみそ汁がうまくできた」「猫が膝に乗ってきた」「同僚が『お疲れさま』と言ってくれた」「子どもが珍しく自分から話しかけてきた」。

こんなことで十分です。

わたしも最初は「何もないな」と思いました。けれど、探そうとすると不思議と見つかり始めるんです。脳が「ありがたいこと」を探すモードに入るから。

これを1週間続けると、日中の過ごし方が変わってきます。「あ、これ今夜思い出そう」と、いいことを探す目になっていく。

バウマイスターの言うとおり、悪いことのほうが強い。放っておけば脳は勝手に「ない」を数える。けれど「ある」を数える習慣をつけることで、そのバランスが少しずつ変わっていくんです。

脳のフィルターが「ない」から「ある」に切り替わる。すると、同じ一日でもまったく違う色に見えてくる。同じ朝の通勤路が、「つらい通り道」から「季節を感じる散歩道」に変わる。

わたしたちに残された時間は、思っているよりずっと少ない。その限られた時間の中で、「ない」を数えるのか、「ある」を数えるのか。それだけで、毎日の色はまったく変わります。

きれいごとではなく、脳の仕組み

感謝は気持ちの問題ではなく、脳の仕組みの話。エモンズ教授の研究がそれを証明しています。

今夜、布団に入ったら3つだけ。今日あった「ありがたかったこと」を思い浮かべてみてください。

目を閉じるだけでいい。

それだけで、脳は少しずつ「ある」を見つける目に変わっていきます。

その小さな積み重ねで、人生を変えていく。

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この記事を書いた人

本音と直感を整える人。50代。会社員時代に人間関係で心と体を壊し、ノート・アロマ・瞑想で自分を取り戻しました。その経験から、40〜50代女性に向けて「もう、頑張らなくていい」を静かに届けています。

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